夜更けに海外ドラマ

海外ドラマのあらすじと感想を中心に、時々映画や国内ドラマの感想も書いています。

映画「ジョーカー」

あらすじ

コメディアンを夢見る心優しき青年アーサー。

普段は大道芸人としてピエロを演じ、母を介護しながら慎ましやかな暮らしをしていた。同じアパートに住むソフィに心密かに想いを寄せながら。

しかし彼は突然笑いだしてしまうという精神疾患を患っていた。

彼にとって世界は決して優しい存在ではなく、仕事も失ってしまい・・・

感想(ネタバレ含みます)

最後まで観て私は迷子のような気分になりました。

2時間弱観たものはなんだったのか?

まずは地下鉄車内での最初の殺人。

女性に絡む3人のサラリーマンの前で笑いが止まらなくなり、当然のごとく矛先はアーサーに向けられ殴られる。

今までなら殴られて終了だった。でもその日は違った。まず一人を銃で撃ち、次に2人目、3人目は停車駅でドアが開き逃げたけれど、追いかけて射殺。

アーサーの気持ちを想像してみる。

一人目では驚いたのだろうと、2人目を撃った時は確認、そして3人目を追うのは狩られる側から狩る側へとなった捕食者としての芽生え。

その直後のダンスを踊るシーンで感じたのは解放。やっと満足する結果を得た勝利の舞にも見えるし、自分のことを知ったのだと思った。


そして第二の殺人。被害者は元同僚のランダル。嫌な奴だった。ハサミで刺した後、何度も何度も壁に頭を打ちつけた。

そこで感じたのは憎悪のみ。前回とは違う直接的な殺害。ハサミで刺す感触、壁に打ち付ける感触、それを全身で感じたはず。

わざわざ殺しに行く価値はないけれど、向こうから現れたから殺してやった。


どちらの殺人も被害者への同情の余地を考えた時、正直あんまりなかった。間違いなく彼らのような人たちがジョーカーを生んだと思うから。

そして彼らは決して特別な存在ではない。毎日みんなが、自分がすれ違う人たちだと思うし、自分だってそう。ただ程度の差があるだけ。

1日を振り返った時、誰かの噂話をして笑い、相手のことを貶めている。そんなことしていないって人はたぶんほぼいない。


そして第三の殺人。いつも笑いを届けてくれる大好きだったテレビ番組の司会者のマレー。

初めて自分の意志で計画をして殺害に至った。アーサーは壊れたのではない。むしろその逆で頭の中がとってもクリアで、晴れていたのだろうと思う。

街で暴動が起き混乱に陥ったのは単なるおまけ。

そしてアーサーに最も影響を与えたのは、誰でもがそうであるように母親のペニーなんだろうと思う。母親の真実はアーサーにとって今までに感じたことのない、この先も感じることのない何かで、アーサーは呑み込まれてしまったんじゃないかと。その結果、優しかったアーサーは消えてしまった。


そんな風に思いながら観てた。だけど最後のカウンセリングを受けるアーサーを観ていて何もわからなくなってしまった。でもそれでいいんだと思った。

ただ一つわかることは、アーサーにとって世界は優しくはないってことだけ。それはアーサーがどんな風に生きようと変えることはできない。

弱者で生き続ける限りは。

まぁ、よっぽどの奇跡でも起きない限りってことですけどね。


監 督:トッド・フィリップス
出演者:ホアキン・フェニックス ロバート・デ・ニーロ ザジー・ビーツ フランセス・コンロイ